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5-1.はじめての消費税の確定申告



これまで免税事業者だったフリーランスの方が「適格請求書発行事業者」に登録申請をして消費税の課税事業者となると、消費税の納税義務が発生します。はじめて消費税及び地方消費税の確定申告を行うことになりますので、その点についてしっかり押さえておきましょう



いつもの確定申告とは別に消費税の申告書が必要



フリーランス:「適格請求書発行事業者になったからこれからは消費税も納めることになるんですよね。いつもの確定申告の時の所得税と一緒に払えばいいのですか?」

税理士:「いつもの確定申告とは別に消費税の申告書を作成して納付しなければなりません。」

フリーランス:「え~、別に申告書を作成するのですか?そんな申告書、作成したことないですよ。」

税理士:「初めての作成になりますね。一緒に見ていきましょう!」



令和5年10月から始まった消費税のインボイス制度。はじめて消費税及び地方消費税の確定申告書を作成する人も多いと思います。適格請求書発行事業者に登録申請されていれば、消費税の申告は、令和5年10月から12月の3ヵ月分を申告することになります。



相談者:「確定申告時期には青色決算書と所得税の確定申告書を作成して、税務署に申告して納付していましたが、その時に消費税を支払う金額を計算して、所得税と一緒に納付するだけではダメなのですね。」

税理士:「青色決算書と所得税の確定申告書とは、まったく別の書式の消費税及び地方消費税の申告書を作成することになります。」

相談者:「そんなの見たことないですけど?」

税理士:「そうですね。これまで免税事業者だったフリーランスの方は初めて作成することになると思います。」

相談者:「いつからいつまでの消費税を計算することになるのですか?」

税理士:「令和5年10月1日から適格請求書発行事業者になったのであれば、令和5年10月1日から令和5年12月31日までの3か月分を計算することになります」

相談者:「その3ヵ月分を計算して申告書を作成するのですね。申告期限はいつまでですか?」

税理士:「令和6年3月31日が申告期限です。」

相談者:「えっ、すぐじゃないですか?」

税理士:「そうですね。あっという間に申告期限ですので注意が必要ですね。いつも青色決算書と所得税の確定申告書は余裕をもって申告していますか?」

相談者:「ギリギリです。。。」

税理士:「確定申告書の期限は毎年3月15日、消費税の申告期限は毎年3月31日です。消費税の申告もギリギリにならないよう早めに着手しましょう」

相談者:「これから、毎年3月は更に忙しくなっちゃいますね。。。」

これまで免税事業者だったフリーランスの方は、毎年3月15日提出期限の青色決算書と所得税の確定申告書に追加して、3月31日提出期限の「消費税及び地方消費税の確定申告書」を作成することになりますので早め早めに準備が必要になってきます。



消費税の確定申告書の期限は翌年の3月31日



消費税及び地方消費税の確定申告書の申告期限は、毎年3月31日です。インボイス制度が始まると同時に課税事業者になると最初の申告は、令和5年10月1日から12月31日までの3か月間の消費税の計算をして、令和6年3月31日までに申告書を提出しなければなりません。その翌年の令和6年からは、毎年1月1日から12月31日までの12か月間の消費税を計算して、その翌年の令和7年3月31日までに提出することになります。

尚、申告期限までに提出が間に合わなかった場合は、「無申告加算税」と「延滞税」が発生しますのでご注意ください。



消費税額の申告書は2種類。どちらを使えばいい?



消費税の計算方法は2つあります。原則的な計算方法の「本則課税方式」と簡便な計算方法の「簡易課税方式」。それぞれ申告書のフォーマットが違います。

フリーランス:「確定申告の時には、青色決算書(一般用)と記載されたものと所得税の確定申告書が税務署から郵送されてきているものを使用しています。消費税の申告書も郵送されてくるのでしょうか?」

税理士:「最初の申告書は郵送されてくるとは思いますが、届かない場合は、税務書の窓口か、国税庁のホームページからダウンロードすることで取得可能です。その場合、消費税の申告書は2種類あるので注意が必要です。」

フリーランス:「えっ、2種類。自分は、その2種類のどれか分かりませんが・・・」

税理士:「計算方法が2つあるお話をしたと思います。原則的な計算方法の一般課税方式と簡便な計算方法の簡易課税方式。その2種類です。」

フリーランス:「計算方法によって申告書が違うのですね。」

税理士:「そうです。原則的な計算方法だと申告書の第一表の右側に縦書きで(一般用)と記載があり、簡易課税方式の場合は、同じく右側に縦書きで(簡易課税用)と記載があります。」

フリーランス:「へ~。申告書にも2種類あるのは知らなかった。作成する前に確認しますね。」

税務署から郵送されてくる申告書がご自身で選択した計算方法です。適格請求書発行事業者に登録申請をして、簡易課税制度の選択届出書を提出していれば、税務署から(簡易課税用)と縦書きのある簡易課税用の申告書が届きます。

簡易課税制度の選択届出書を提出していなければ(一般用)と縦書きのある申告書が届きます。

申告書の中身を見れば、原則課税方式と簡易課税方式の違いがわかると思いますが、慣れていないうちは、パッと見て右側の縦書きの部分で確認しましょう。

簡易課税制度の選択届出書を提出していないのに簡易課税制度用の申告書を使用して申告した場合は、税務署から電話がかかってきて提出し直しとなり計算差額も納税(還付になることもあるかもしれません)することになりますのでご注意ください。

税務署から申告書が届かなかった場合は、インターネットからダウンロードをしましょう。その際、簡易課税用と一般用を間違えないようご注意ください。

また一般課税の申告に必要な付表、簡易課税の申告の際に必要な付表も合わせて提出が必要となります。

図1 原則的な計算方法の一般課税方式のフォーマット(一般用)

図2 簡便な計算方法の簡易課税方式のフォーマット(簡易課税用)



消費税の納税期限は3/31。延ばせる?



消費税及び地方消費税の申告期限は、3月31日までですが、納付期限も同じですので、それまでの間に納付を済ませる必要があります。尚、納付方法は色々ありますので、ご自身にあった方法で納税されると良いでしょう。

フリーランス:「消費税納めるときは、色々な方法があるって聞きました・・・。」

税理士:「所得税は、どうしていますか?」

フリーランス:「納付書に金額を記載して金融機関の窓口で納付しています」

税理士:「金融機関の窓口に並ぶのは大変じゃないですか?」

フリーランス:「そうですね。けっこう待たされます。」

税理士:「それに3月15日までに納めているその税金を約1ヵ月後に延滞税もかからず支払いができたら、資金繰りが1か月分ラクになりませんか?」

フリーランス:「1か月も後に。それは資金繰りがラクになります。そんなことができるのですか?」

税理士:「それが振替納税です。指定された個人の口座から約1ヵ月に自動で引落になります。これが消費税の納税にも利用できるのです。3月31日まで納税しなければいけない消費税が、約1ヵ月後に、指定口座から自動で引落になります。」

フリーランス:「それ、いいですね。そのためにはどうしたらいいですか?」

税理士:「預金口座振替依頼書に必要事項を記入して提出すれば大丈夫です。」

フリーランス:「それ、早速申し込みしたいです。」

はじめて消費税の納税をするにあたって、消費税の納付方法はいくつかあります。これまでは税務署の窓口や金融機関の窓口で納付する方法が一般的でしたが、最近はクレジットカードでの納付やインターネットバンキングからの納付やダイレクト納付といった方法もあります。それぞれ自分に合った方法を選んで納税されると良いと思いますが、手数料もかからず約1ヵ月後に消費税が自身の口座から自動で引落となるのは、とても便利な制度ですので、決して新しい納付方法ではないですが、振替納税も選択肢の一つとして検検討してみてもいいと思われます。



消費税の予定納税とは?


所得税にも前年に納税額を基準にした税金の前払い的なものとして予定納税がありますが、消費税にも同じような仕組みがあります。消費税及び地方消費税の確定申告書をした際、消費税(国税部分)のみで納付税額が48万円を超える場合は、翌年から消費税の中間納付を行うことになります。基本的には税務署から消費税の中間納付のお知らせが届きますので、その納付書を使って中間納付をすることになります。

 

この中間納付の回数や金額は国がルールとして決めているため予測ができます。そのため確定申告をしたタイミングで納税額から翌年の中間納付の納付税額とタイミングはわかります。

 

消費税の国税部分のみですが、前年の納付税額が48万円超400万円以下であれば、中間納付は年に1回だけで、その納付期限は8月31日。納付額は、前年の消費税額の1/2となります。



更に400万円を超4800万以下であれば、年間3回の中間納付が必要となります。その場合の納付期限は5月31日、8月31日、11月30日となり、納付税額は、前年の消費税額の1/4で、3回の中間納税が終わると前年の納税額の3/4を確定申告の前までに納めたことになります。



国としては、早く消費税を徴収したいためこのような制度があるのですが、この中間納付にも期限があるため、遅れると延滞税が発生するので注意が必要です。



尚、この中間納付税額の計算にも2つの方法があり、上記のような決まったルールで納付書が送られてくるスタイルが予定申告方式で、もう一つが仮決算方式です。



仮決算方式とは、仮で決算を行ってしまうという方法です。中間申告の回数が1回であれば、中間申告の対象期間が6カ月ですのでその期間で仮決算を行い、中間納付税額を計算します。少し面倒な話ですが、もし前年よりも消費税額が少なくなりそうなケース(業績が悪化したようケース)では、この仮決算を行って中間納付をすることで、納税額を抑えられるというメリットもあります。今後、中間納付が発生する時には参考にしてみてください。

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