「適格請求書発行事業者」になると、これまでの実務が変わります。
「適格請求書」を発行する
フリーランス:「適格請求書って何ですか?そもそも、私は今まで請求書なんて作成したことがないのですが。。。」
税理士:「名前は請求書と言っていますが、領収書で相手に渡しても良いんですよ。」
フリーランス:「なんだ、じゃ今まで通り、領収書を渡せば良いんですね」
税理士:「その領収書にインボイス発行事業者の番号を入れないといけません」
フリーランス:「番号が必要なんですね。でもその番号が正しいかなんてわかるのかな?」
税理士:「国税庁が公表サイトに掲載されているので、簡単に確認できますよ」
フリーランス「じゃ、テキトーってわけにはいかないんですね。」
適格請求書とは?
適格請求書は、適格請求書発行事業者に登録した事業者だけが発行できるものです。各事者で色々な請求書や領収書を普段から使用していると思いますが、記載しないといけない項目が決まっていますのでそれに準じた書類を準備していきましょう。
フリーランス:「適格請求書は記載事項を全て満たしていたらどんな形でも大丈夫ですか?」税理士:「はい、あなたが相手先に発行する請求書でなくても、領収書でも大丈夫ですし、相互に関連する複数の書類、例えば納品書と請求書で記載事項を満たすことができれば大丈夫です。」
フリーランス:「私から相手先に何かを渡すことはなくて、いつもは相手から支払通知書が届くのですが、それでも大丈夫でしょうか?」
税理士:「相手からの支払通知書でも大丈夫です。但し、必要な記載事項が全部記載されている必要があります。」
フリーランス:「具体的には何ですか?」
税理士:「一番大事なのは、適格請求書発行事業者の番号です。この番号は、相手先はまだ知らないと思います。その番号を相手先から毎月いただく支払通知書に記載してもらう必要があります。」
フリーランス:「こちらからも情報提供をしないと適格請求書の要件を満たせないのですね。」
税理士:「そうなんです。そのためにもインボイス制度が始まる前までに得意先と連絡を取って、どの書類を適格請求書とするか?必要な情報は何か?を確認調整していただくと良いと思います」
フリーランス:「そうだったんですね。適格請求書発行事業者の登録申請が終わった®それでいいと思っていました・・・」
税理士:「取引のあるところには、インボイス制度が始まる前まで諸々確認した方が良いですよ。」
適格請求書のフォーマット
適格請求書に記載すべき項目
・適格請求書発行事業者の名称と登録番号
・課税資産の譲渡等の年月日
・課税資産の譲渡等に掛かる資産または役務の内容
・課税資産の税率ごとの対価の額と適用税率は
・税率ごとに区分した消費税額
・書類の交付を受ける名称
【適格請求書】
適格請求書は実際に下記項目を記載することになります。
(ここに図を入れます)
実際にはこれまでの請求書に①登録番号と②税率ごとの対価の額と適用税率③税率ごとの消費税の額だけを追加するのみです。
尚、小売業や飲食店など不特定多数の方をお客様にするフリーランスの場合、相手先の名前を都度記載するのは大変ですので、そのような場合は簡易適格請求書の発行が認められています。
【簡易適格請求書】
簡易適格請求書は以下のフォーマットです。
(ここに図を入れます)
適格請求書と違うのは、相手先の名称を省略できること。また適格請求書では、消費税額と適用税率の両方を記載しなければなりませんが、どちらか一つでも良いとなっています。
まとめ
「適格請求書」といって何か特別の請求書かと思いますが、これまで通りの請求書に番号が入ったようなものだと認識していただいて大丈夫です。
端数の処理
適格請求書においては、消費税の計算上の小数点以下についての端数処理は、1枚のインボイスにつき1回限りとなります。
フリーランス:「うちはたくさんの無農薬の野菜を販売していて、軽減税率8%だから一品一品計算上、端数が出るんだよね。」
税理士:「レシートに一品ごとの野菜の金額と消費税額が下にずらっと並んでいるパターンですね。」
フリーランス:「そうです。インボイス制度が始まって、何か変わることはありますか?」
税理士:「消費税を野菜1個1個計算はできなくなります。1枚のレシートの中で消費税の計算をするのは1回だけになります」
フリーランス:「よくわからないんですが。。。」
税理士:「野菜を5個購入されたお客様に対して発行するレシートを思い浮かべてください。野菜それぞれに本体価格とその消費税も記載されていますよね。今後は、野菜5個のそれぞれの消費税は計算しないで、野菜の合計金額にだけ、その消費税を計算して記載することにになります。」
フリーランス「なんかよくわからないけど、消費税の計算を1回だけしかできないとなるとレシートの表示方式など変更しないといけないですね」
税理士:「そうです。急ぎ対応が必要ですね」
消費税の端数処理の計算はルールが統一に
消費税の端数処理においては、これまでは、それぞれの項目ごとに計算しても、一つの請求書の中の8%と10%のそれぞれの税率ごとに合計した売上高をもとにして計算した消費税でもよいこととされていましたが、後者に一本化されます。
【個別品目ごとに消費税を計算するパターン】
(ここに図を入れます)
【税率ごとに合計して売上高に対して消費税を計算するパターン】
(ここに図を入れます)
インボイス制度が始まると、上のパターンは認められなくなります。現状でその計算方法を採用している場合は、下のパターンにフォーマットを変更する必要があります。今からそのルールに沿った計算表示方法になっているかを確認修正していく必要があります。
まとめ
「適格請求書」1枚につき、税率ごとに1回の計算のみ認められるルールに統一されます。
売り手と買い手の双方でインボイスを保管する義務に変わる
支払をした側が、消費税の仕入税額控除を受けるためには、その適格請求書の保存義務があり、その適格請求書は買い手だけでなく発行した側も同じものを保管する義務があります。
フリーランス:「インボイス制度が始まると、その適格請求書を保管する義務があるってことですが、なぜですか?」
税理士:「消費税の計算が正しくできているか?またその適格請求書を発行している相手は、本当に適格請求書発行事業者かを税務調査の時にも確認するためです。」
フリーランス:「じゃあ、適格請求書を毎回もらえないケースはどうなりますか?」
税理士:「具体的にどんなケースですか?」
フリーランス:「私が教室として借りている場所の不動産オーナーに毎月家賃を支払っていますが、オーナーから請求書なんて毎月もらっていません。」
税理士:「そういった場合は、不動産の賃貸借契約書に登録番号や税率区分ごとに消費税の金額と税率を追加記載して契約をし直せば、その契約書と毎月の家賃が口座振替となっている通帳を合わせて適格請求書の要件を満たすことになるので、それを保存しておけば大丈夫です。」
フリーランス:「なるほど。それなら大丈夫ですね。ただ、過去に契約した賃貸借契約書をまた作成しなおして締結となるとちょっと面倒かな・・・」
税理士:「必ずしも契約書の再作成をして契約をし直されなければならないわけではありません。過去の契約書と一緒に登録番号など必要事項を記載した書面を一緒に残すことで仕入税額控除を受けることができます」
フリーランス:「良かった。それなら簡単ですね。大家さんに話をしてみます」
適格請求書の保存義務を忘れない
適格請求書が無ければ、消費税の仕入税額控除を受けることができませんので、本則課税方式を選択したフリーランスの方は、必ずその保存義務を忘れないようにしなければなりません。
相手から、常に適格請求書を受取ることができれば良いですが、インボイス制度が始まると、お金を支払ったことで経理実務上問題ないと思ってやり過ごしてしまうと、その支払いにかかる消費税の仕入税額控除が受けられなくなります。
上記の不動産の賃貸借契約においても、インボイス制度が始まる前に大家さんに確認が必要です。大家さんも実は免税事業者でこれから適格請求書発行事業者になるか?迷っているところかもしれません。また、今現在支払がある取引先で、適格請求書が受け取れそうか事前の確認をしても良いかもしれません。
まとめ
「適格請求書」の保存義務を前提に普段の支払先との請求書等のやり取りにつき、インボイス制度に合わせた形に修正できるよう話をしてみると良いと思います。